トランプ大統領がパリ協定からの脱退を発表し、世界中が大騒ぎしていますね。なぜトランプ大統領は、協定離脱を判断したのかを考えるとともに、そもそもパリ協定ってなんだっけというところから振り返りつつ、まとめていきたいと思います。
概要
米国のドナルド・トランプ大統領は、6月3日にパリ協定からの離脱を発表しました。パリ協定は、地球温暖化対策の国際的枠組みであり、世界第2位の温暖化ガス排出国であるアメリカの離脱は、この枠組みに大きな影響を及ぼすことになるでしょう。
実は、4月後半に行われたG7(主要7カ国首脳会議)では、トランプ大統領を慰留するようなコメントを各国が出していました。安倍晋三首相は、気候変動問題への取り組みの重要性を語り、そのためにパリ協定の着実な実施を説きました。そのセッションでは、マクロン仏大統領がトランプ大統領に協定離脱を思い留まるよう求め、メルケル独首相も同調する場面がありました。国際的な反対を押し切って、今回の離脱発表に至った訳です。
パリ協定とは
そもそもパリ協定とはどんなものだったのか、おさらいしましょう。歴史を遡ると、温暖化対策で最初にできた枠組みは、1997年の京都議定書です。ただし、参加したのは一部の先進国のみでした。日本などの先進国には、削減目標が課されましたが、途上国は削減義務がなく、頑張りましょう状態だったのです。
時は流れ、2015年12月12日、パリにて第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)が開催され、パリ協定が採択されます。今度は、世界中のほとんどの国が参加しました。全世界規模の枠組みになった意義は大きく、この時、温暖化ガス排出の第1位の中国と第2位のアメリカが協調したことが、実現を大きく後押ししました。ただ、参加国を増やすことを優先させたため、罰則規定はない緩いものとなってしまったのです。
協定離脱の理由は
当初、トランプ大統領が「地球温暖化は中国のでっち上げだ」と発言していたという報道もありました。しかし、最近では、気候が変動していること、汚染物質が原因であることを信じているという論調に変わっています。そのため、「米国は責任を負うべきだし、パリ協定から離脱したからといって、環境問題への取り組みは止めない」と強調もしています。離脱の理由は、「削減目標を実施すると米国経済へ大きな犠牲がでるため」と演説で述べています。指図はされるのではなく、自分たちのやり方でやっていくというのです。
大統領は上記の通り、言った訳ですが、世間的には選挙公約へのこだわりが理由と考えられています。2月の大統領就任後の支持率は41%ともともと低かったわけですが、最近では38%とさらに下がっています。この38%を支えているのは、石炭産出州の支持者たちであり、まさにパリ協定離脱で石炭産業を守るとしている人たちなんです。大統領選では、「アメリカ・ファースト」(米国第一)を唱え、雇用維持を謳ったトランプ大統領は、白人の炭鉱労働者たちにその実行をアピールしたという訳です。
過去の経緯
トランプ大統領は、オバマ前大統領の政策をことごとく覆している訳ですが、これはそれほど珍しいことではありません。今回のパリ協定の件も、アメリカには前歴があります。パリ協定の前の枠組みである京都議定書は、クリントン元大統領によって署名されましたが、後にブッシュ元大統領が拒否したという例もありました。
新しい大統領が政策転換することは歴史上よくあることであります。トランプ大統領は、雇用創出のため石炭産業の復興に力を入れており、オバマ政権の政策が邪魔になっているのです。パリ協定しかり、化石燃料の使用を規制する「クリーンパワー・プラン」も目標になるでしょう。
筆者の所見・感想
端々の発言を摘み取ると、支持率確保のため強気に言ってみたけど、後で取り繕っているという印象ですね。国内向けにはアピールのため離脱するぞとする一方、外向けには離脱はするが責任はあるからちゃんとやるし、完全に離脱というより交渉の余地もあるという趣旨の発言もしています。
今後の動向に注目ですが、大国として、責任のある着地を見せてほしいところですね。