米議会予算局が、オバマケアの代替法案である「トランプケア」が成立すれば、
新たに1500万人が医療保険を失うという予測を出しました。
そもそもトランプケアってどんな内容なのか、というところから、
専門家が指摘する影響までを簡単にまとめてみました。
トランプケアとは
「トランプケア」は、トランプ大統領が
オバマケアの代替案として提示した法案です。
オバマケアによって、アメリカの医療保険制度が改革されましたが、
トランプ陣営が言うには、保険料が高すぎて
入っていない人が多いというのです。
トランプ大統領は、公約で言いました。
「我々は、すべての人に保険を提供する」
では、オバマケアの代わりにトランプ大統領が提示した
トランプケアとはどういったものだったのでしょうか。
オバマケアとの比較すると、
ずばり「低所得者と高齢層に厳しい」内容と言われています。
4つのポイントに搾ってみていきましょう。
①加入義務
オバマケアでは、全国民に加入義務が”ありました”。
ところが、トランプケアは加入義務が”ありません”。
あれ?すべての人に提供するって言ってませんでしたっけ?
トランプ大統領がいうには、すべての人に
“選択肢”を与えるということだそうです。
オバマケアは全員加入とか言ってるけど、
結局入ってない人いるんだから、内容変えて、
全員が選びたくなるようなものを作った方がいんじゃね?、
と言ってるんです。
うーん、苦しい言い訳にも聞こえますが。。。
②最低限の補助
オバマケアでは、外来患者サービスや入院といった
10項目について、全部を最低限のサービスとして保障していました。
ところが、トランプケアでは、これらを
州政府の裁量で決めていいことになっています。
州ごとに決めさせた方が競争が起きて、
いいサービスになっていくという意図なんでしょうか。
市場に任せるか、国がどこまで口を出すべきか、は
意見の分かれるところですが、
医療制度というセーフティーネットで、
最低限のラインを国が保障しなくなること否定的な意見も多いです。
③医療保険の補助
オバマケアでは、貧困ライン”年収の4倍”まで補助金を支給しました。
ただ、これは加入者全体の85%に相当し、
政府にとってはかなりの負担になっていました。
一方、トランプケアでは、”税額控除”を適用して年齢で決定します。
税額控除とは、医療費を使った分、税金を安くしてあげるよということですが、
引くためには税金が多くなければいけなく、
つまり、所得が多い人=金持ちが多く引いてもらえるんです。
年収の4倍まで補助金がもらえたオバマケアに比べると、
低所得者は損をする制度に変わりましたね。
④メディケイドの費用負担
メディケイドとは、低所得者層向け医療保険のことです。
低所得者には、それ用の医療保険があるんですね。
オバマケアでは、州政府の支払いの一部を連邦政府が負担していました。
トランプケアでは、メディケイドを2020年までに
段階的に廃止するとしています。
ここも低所得者に厳しいと言われている内容の一つです。
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トランプケアの影響は?
トランプ大統領は、公約として、オバマケアを廃止し、
「素晴らしい医療制度」と「国民全員のための保険」を作ると言いました。
内容は上で見てきた通りですが、実際のところ
可決された場合はどれほど影響があるんでしょうか。
議会予算局(CBO)という予算分析する集団がアメリカ議会にあるんですが、
そこの分析によると、トランプケアが成立した場合、
10年間で無保険者が2400万人に増えるそうです。
2018年だけに絞っても、オバマケアを続けた場合よりも、
保険加入者は「1400万人」減少するそうです。
これがどういう数字化というと、医療保険に加入できないと、
病気にかかった場合、適切な医療が受けられずに死亡するケースが増えます。
1500万人が無保険者となった場合、少なくとも1万8000人が
死亡するという試算があります。
つまり、トランプケアが導入されると、2018年だけで
1万8000人が死亡する計算になるのです。
テロの死者の50倍とかいう数字も報道されてますが、
医療保険の問題は、一度のテロで亡くなる人より影響が大きく、
直接比べられるわけではないですが、
テロ対策などの政策より重要でないと簡単には
切り捨てられない問題なんです。
ちなみに、なんでそんなに無保険者が増えるのかというと、
保険料が上げるからです。
トランプ大統領は、医療保険が手ごろな価格になると言ってきました。
しかし、議会予算局の分析だと、むしろトランプケアで
保険料が跳ね上がるという試算になっています。
例えば、年収300万円の64歳の女性の場合、保険料は、
オバマケア:約19万5000円
⇒トランプケア:約167万円
に跳ね上がるとされています。
上でも書きましたが、トランプケアで損をするのは
「低所得者と高齢者」です。
なので、これは一番厳しい例だと思います。
若者などは安くなる人もいます。
ただ、一番医療保険を必要としている人が、
まさに「低所得者と高齢者」でしょうから、
こんなに値上げされたら、たまったものではありません。
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結局、可決されたのか
いろいろ説明しましたが、実はこのトランプケアは、
結局、採決直前に撤回されました。
敗色濃厚だったので、トランプ大統領から
取り下げたわけです。
議会予算局が上記のような調査結果を出したことで、
議会での調整が難航し、賛成票を集めきれなかったとのことでした。
まぁ、さすがに中身がよくなかったってことですね。
公約としていた法案を撤回したわけですから、
トランプ大統領としては、大敗北でかなりのダメージです。
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筆者の所見
オバマケアにも問題があるとはいえ、
今回はトランプケアの内容がさすがにまずかったようですね。
長年に渡って問題になっていた医療保険制度は、
そう簡単にいい答えはないようです。
公約の一つが実現できなかったトランプ大統領、
次の一手はどうくるでしょうか、期待です。
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